日本のイベント業界は周回遅れ?

 新型コロナウィルスの流行に伴い、緊急事態宣言が延長されていますが、すでに欧米ではイベントを含む経済活動の再開にむけた動きが活発になっており、ネバダ州のビジネス再開を始めとした良いニュースが聞こえてきています。

 そんな欧米のイベント産業界ですが、日本のそれと比べ歴史も組織もちがい、確立された産業セグメントとして経済の一翼を担っています。制作物のクオリティという観点から見れば、日本のイベント業界も世界に負けない品質を提供していますが、オペレーションやアイデア、労務管理など、産業構造的な観点からはすべて劣っていると認めざるを得ません。

 イベント業界とMICE、インセンティブ業界は企業のマーケティングプラットフォームの一部であり、この産業をサステナブルのものにしようとする活動が盛んです。例えばヨーロッパを代表するイベント業界団体であるUFIは、世界85ヶ国以上に800団体に近い会員が参加しており、世界各国でイベント業界を対象としたカンファレンスを開催しています。MPIPCMAも同様の活動をしており、このようなカンファレンスでは年間を通して顧客満足度の高い主催者を表彰するアワードや、運送会社、施工会社からみたパフォーマンスの高いオペレーションチームの表彰など、普段イベントの表舞台にたたない関係者まで、お互いのモチベーションを高めるための活動をしています。

主役はイベントマーケター

 イベントグローブでもイベントプランナーを対象にした海外イベント特集を組んでいますが、これらのイベントにはイベントの主催者、イベントを制作するSP企業に限らず、テクノロジーのプロバイダーから、実際に企業でイベントを主催するマーケティング担当者も自社イベントの運営のヒントを求めて多く参加しています。あくまでも主役はイベントを主催するイベントマーケターであってサービスのユーザー(バイヤー)である主催者と、サプライヤー(セラー)であるユーザーがバランス良く参加してマーケットプレイスを成立させています。

 特にユーザーである企業のマーケターの参加は、サプライヤーにとってインセンティブとなり、これらのイベントにとって健全なエコシステムを提供しています。

 日本国内では国際MICEエキスポ(IME)がこれに当たる筈なのですが、実際に参加する企業に偏りがあります。旅行代理店、会場施設、各地域のコンベンションビューローなど、どちらかと言えば旅行産業界からの参加が中心になっており、イベント産業のユーザーである企業による参加は多くありません。各地域のホテルや施設なども観光誘致の目線での参加が多いため、どちらかと言えば地方観光地を紹介する観光フェア的なものになってしまっているのが現状であり顧客不在のイベントになっている印象です。

 本来であれば、B2Bのプラットフォームとして、サプライヤーである開催地/会場/コンベンションビューローや関連テクノロジー企業と、バイヤーであるイベント主催者/企業のマーケター/SP企業をマッチングする筈なのですが、その機能は欠落しているのは非常に残念です。現状の枠組みの中では欧米のようなMICEモデルを推進することは不可能でしょう。

 2016年から虎ノ門ヒルズで開催されているイベントレジストが主催するBackstageには、ユーザーサイドである企業も比較的多く参加しており、今後このようなイベントが増えていくことが、イベント産業が一産業として確立されていくための近道になると思います。

業界団体による横断的な活動の必要性

 日本にも日展協日本コンベンション協会のような業界団体は存在するのですが、業界全体を支援するような互助の取り組みは行われておらず、まだ欧米のイベント産業界からは周回遅れとなっているのが現状だと思います。

 業界団体の役割は、特定業界を地域経済における確立された産業へと成長させ、関わる人々の社会的地位を上げていくことに貢献することです。特に今回のようなパンデミックのような緊急事態に対して、業界従事者の権利を守り、産業を維持していくことが重要です。元々国民の40%が非正規雇用(平成元年には20%)という異常な状態のなかで、今回のようなグローバルスケールのパンデミックはイベント業界を大きく直撃しているにも関わらず、世の中では飲食業のように保証の対象になるような施策は行われておらず、この産業の弱さ、脆弱性が露呈しています。

 当面はCovid-19への対応、東京オリンピックの対応に追われ新たな動きは無いかもしれませんが、2022年以降のイベント産業界のあらたな取り組みとして、底上げが必要になるでしょう。


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