名目GDP世界3位という幻想

海外に市場を広げていかないとたちいかない日本の未来

最近よく見かける日本の名目GDPや国力衰退の記事。海外イベントを通じたビジネスを推進しているイベントグローブという立場から、あらためて精査してみました。データの出典元は主にIMF(国際通貨基金)の2018年の数値となります。

名目GDPランキングから読み取れない経済実態

国別名目GDPランキング(IMF 2018年)
※金額は全て米ドル

これは一般的に公表されているランキングであり、日本のGDPが世界3位という話はいまや常識的な話になっている。世界の総GDPに対する各国シェアを見た場合に日本は米国の24%、中国の37%程度である。
しかしこの指標は、市場のおける技術の成長・浸透度、労働人口の質と量に影響されやすいの現実。実際の市場の実力を見るためには、国民一人当たりの数値や過去の成長率を見ることが重要。

総名目GDP上位10カ国で、一人当たりの順位が10位以内に入るのは米国のみ。
日本の国民生産性ってアメリカの半分程度なのです。

まず実際に名目GDPを人口で割った国民一人当たりで見てみると状況は一転する。総GDPでは世界3位が26位まで下がるのだ。2000年には一人当たり名目GDPでも世界2位であったのものがたった18年で26位にまで転落している。日本は製造・生産技術においては世界でもトップレベルであり、労働人口も都市に集中しているので、本来であれば一人当たりの名目GDPがそれ程減少する理由が見当たらない。人口が急増(=非労働年齢の増加)しているわけでもなく、これからさらに分母(人口)が減っていく状況の中でこの惨状である。過去10年で成長著しい中国やインドをみれば一人当たりGDPは少ないが、これは総人口と労働人口を考えれば当然である。

人口が少ないゆえに一人当たり名目GDPが高くなる傾向にあるシンガポールと比べてみると、日本の下降振りはさらに分かりやすい。

一人当たり名目GDPで見た日米とシンガポール
名目GDPでは世界第3位(約4.972兆米ドル:2018IMF)となる日本だが、一人当たり名目GDPでは26位となっている。

一方でアメリカは過去30年に渡って国民一人当たりの名目GDPを成長させながら全体の名目GDPの成長を維持している。そしてシンガポールはそれを超える成長率で2017年に米国を追い抜いています。

重要なのは実態GDPと成長力

日本は人口の都市への集中、教育機会の充実等の条件から、新興国と比較して生産力の高い人口の比率が高い筈なのである。しかし、この10年20年を見てみればまったく生産性が上がっていないのだ。世界的に伸びていないのなら仕方ない。しかし日本の生産性の停滞は悲惨な現状があるのが事実であり、これは全ての日本人が受け入れるべき現実なのだ。

各国の成長力をみるためにIMFのデータをベースに過去5年から20年と2018年を比較してみた。既出のように日本の一人当たり名目GDPは世界26位。そして過去10年間停滞している。20年前のバブル崩壊後の低迷期と比較しても伸び率は海外に見劣りしている。

過去10年間の伸びがない
20年前のバブル崩壊後と比較しても23%しか伸びていない

現政権において経済の衰退が指摘されている韓国ではあるが、実態としては過去20年間において日本を遥かに超える成長を記録。1997年と2008年に経験した通貨危機以降、順調な成長。

韓国通貨危機以降、過去10年で56%の成長
20年前と比較して4倍規模

欧米に目を向けてみよう。自動車産業という日本と似た産業を抱えるドイツ、そして古くからヨーロッパの経済の中心であったイギリス。両国ともに成長は鈍化しているが、73%、51%と日本に比べれば成長は維持している。イギリスについては今後のBREXITの動向によってGDPへの影響は予測される。

米国については過去30年に渡って米国は国民一人当たりの名目GDPを成長させながら全体の名目GDPの成長を維持している

現在圧倒的なスピードで経済圏の拡大を図っている中国。名目GDPでは第2位となるが、14億を超える総人口から一人当たり名目GDPは72位の9580ドルになっていますが、過去20年で見ると11倍、成長の鈍化が見られるこの5年間でも35%の成長を維持している。

一人当たり名目GDPは第72位だが20年前と比較して11倍
成長率は減速傾向にあるが過去5年で35%を維持

国土が狭く人口が5600万人のシンガポールを単純に比較することはできないが、一人当たり名目GDPは着実に成長を維持しており、アジア圏の中では安定した成長力を維持している。

2017年に米国を抜き一人当たり名目GDPが第7位に
一人当たり名目GDPは日本の1.6倍

日本は衰退途上国であり生き残りを掛けて外に出なくてはいけない

日本は既に衰退途上国であり、このままではアジアの”気のいい劣等生”になりかねない。今後のサステナブルな社会の創造のためにはあらためて世界に学んでいく必要性がある。そしてそのためには初心に帰って海外に学ぶことは現在の日本人にとって最重要課題なのです。歴史的に見れば日本人は鎖国という国を閉ざした期間はあったものの、海外に知恵と市場を求めて活発な活動をしてきた。

だからこそ(こじつけになってしまいますが)海外で開催されているカンファレンスは重要な情報源となってくると思うのです。

テレビでは、”日本が素晴らしい”とか”日本に行きたい”という類の番組が多く放映されていますが、それは裏返せば今や日本が物価の安い国として観光が盛り上がっているということなのです。

そして、これはそのまま賃金の安い国に結びつく訳であり、労働人口が溢れているのであれば、このままでも問題ないのですが、現状の出生率の低下から考えると労働力が不足し、そして市場も縮小していくことは明らかなのです。海外からの労働人口を取り入れる選選択肢もあるのですが、この賃金で優秀な人材を確保することは不可能。

非常に残念なことに、このまま行くと現在の20〜30代が50代を迎える頃には、世界の成長から全く取り残された後進国になってしまうことは必至だと言えるでしょう。