サンフランシスコの没落

何がコンベンションシティの明暗を分けたのか?

 近年、老舗イベントの離脱が続くサンフランシスコ。一体何が起きているのでしょうか?いまでも17万人を超える参加者を集めるDreamforceや、ゲーム開発業界を代表するGame Developers Conferenceが開催されるサンフランシスコですが、実はあまり調子が良くありません。

 北米ではラスベガスがコンベンションシティとして順調にシェアを伸ばしており、この数年だけでもOracle CloudWorldMWC Las VegasVMware ExploreWinter Fancy Food ShowGoogle CloudNextProgrammatic I/Oといった歴史のあるイベントを誘致しています。そしてその多くがサンフランシスコで開催されていたイベントです。

 ヨーロッパに目を向けると、2025年以降もバルセロナでの継続開催が決定したMWC(モバイル・ワールド・コングレス)。バルセロナでの継続には、主催者に限らず自治体による大規模な協力があったのが現実です。

 世界には多くのコンベンションシティがあり、国内外からイベントを招致し地域経済に投資を誘致しています。バルセロナ(カタルーニャ州)は、地域経済の継続的な成長を見据えて地域のセキュリティや会場の拡張など大規模な投資を実行した訳ですが、世の中すべての自治体・会場が達成できるものでもありません。

成功しているのは・・・・

 ラスベガス以外では、SXSWの開催地として国内外から多くの訪問者を集めるオースティンも、数多くのイベントを誘致しており、同時に国内外から集まったテクノロジー、製薬、食品産業によって地域経済を成長させています。

 これらの都市に共通しているのは、イベントに参加するゲストを迎えるための投資を実行しているということです。ラスベガスは歴史的にIRとしてゲストを迎えるエコシステムに加え、コンベンションを開催するための様々なサービス業が存在し、主催者にとっても参加者にとってもイベント開催・出展がしやすい環境が整っています。同様にオースティンはSXSWの成長と共に、不足する宿泊施設の拡充を続けています。

 対して、ラスベガスに多くのイベントを奪われたサンフランシスコですが、残念なことに有効な手を打てていないのが現状です。

 1981年にオープンした市内の大規模会場であるモスコーニセンターも、1991年から2003年に拡張を実施してはいますが、長く指摘されていた道路環境や治安の問題に加え、市内の宿泊施設の老朽化・価格高騰に対応出来ず、2020年には長く続いたオラクルのイベントを失っています。

 そして近年では、合成麻薬の蔓延、950ドル相当以下の窃盗行為が軽犯罪として分類されることになり多くの小売業が撤退を進めており、治安悪化やホームレスの増加と合わせて訪問者のデスティネーションとしての魅力を失っています。

サンフランシスコの復興には時間がかかる

 元々有効な土地面積の限られた地形で、歴史的に見ても1906年に発生した大地震以来、大きな街のトランスフォーメーションは起きていないのが実情であり、不足・老朽化の進む宿泊施設の問題は当面解決されないと予想されます。

 筆者自身、80年代に学生として90年代は駐在員としてベイエリアで過ごし、サンフランシスコは大好きな街の一つなのですが、残念ながら今日のサンフランシスコには魅力を感じないのが本音です。

 複数のテクノロジー企業がサンフランシスコ及びベイエリアから拠点を移してはいますが、90年代にも同様な現象は起きていて、これは周期的な経済の振れだとも考えています。いずれは再興してサンフランシスコも以前のような輝きを取り戻すと信じて、その時には多くのイベントがこの地に回帰するでしょう。


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