リアルイベントの価値ってなんだろう?

 世の中はオンラインに向かっていますが、実はイベントの主催者から見るとオフラインイベントをやりたがっているのは事実です。

 今年、史上初の(部分的な)オンライン開催となったIFAを主催するメッセ・ベルリンのイエンズ・ハイテッカー氏も強く次回以降の開催について言及しています。

 現在のような感染症のリスクの元にオフラインイベントを開催することの是非はあるとしても、主催者のビジネス的にみれば(少なくとも)現時点では理にかなっているのは事実です。

それでは参加者の目線ではどうなるのでしょうか?

オフラインには生々しい話が溢れている

 古いノスタルジックなお話しはしてはいけないのですが、いままでにオフラインならではのメリットを感じた局面をお話すると・・・・・

 以前、COMDEXというイベントがラスベガスで開催されていました。2000年代に入ってCESに市場を奪われるまでは、CeBITに次ぐ世界2番めの規模のコンピュータの見本市であり、毎年11月には世界中からラスベガスに20万人の業界関係者を集めていました。日本ではソフトバンクのグループ会社が開催していた時期もありましたが、World PCエキスポの牙城を崩すには至らなかったようです。

 当時、シリコンバレーに駐在していた私は日本でPC関連のイベントを立ち上げるためCOMDEXに通っていました。すでにコンベンションシティーとしての地位を確立していたラスベガスには、世界中から20万人近い業界関係者が集まります。大手企業からスタートアップ、そして私達のようなメディア企業の参加者まで、世界のPC,コンピュータ産業界が一同に介します。

現地のジャーナリストやメディア記者の間では有名なお話しなのですが、当時のサンズ・ホテル(1996年に閉鎖、現在はThe Venetian)のメインバーにビル・ゲイツアンディー・グローブといったPC業界のリーダーが集まり、夜な夜な酒を交わしながら業界の未来を語っていたそうです。それを知っている記者たちは、彼らのそばに席を構え、何食わぬ顔で後ろの席の会話に聞き耳を立てるの毎晩の日課だったとか。そこでは半導体メモリの販売とOSのサイズなど、いわば独禁法に触れるようなオフレコ会話も飛び出していたそうで、あまりにも危ないお話しが多く、実際に記事にすることは出来なかったらしいです。

 私自身はビル・ゲイツの話を立ち聞きしたことはありませんが、展示会場のブースに立つファウンダーやCEOのお話しを直接聞くと、公式には発表されていない開発の経緯や課題など、色々な話が耳に入ってくることは事実です。そしてイベントの会期中に開かれるプライベートイベントでは、様々なオフレコ話や失敗談を聞くことができます。

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 このように世界を代表するカンファレンスには、企業のファウンダーからCEOまで、業界を創る人々が集結し世界の未来を語っているのです。これを実際に体験するには残念ながらオンラインにいたのでは無理でしょう。

どうやって参加するイベントを選ぶべきなのか?

 今後、どのようなイベントに参加することが自分にとって、そして企業にとって良いのかは目的にもよりますが、まずは成長を続けているイベントであることは重要でしょう。

 しかしイベントも生き物であり永遠に成長を続けることはありません。伸びる時期もあれば衰退する時期もあり、あのCESですら一時は成長を止め昔の日本エレクトロニクスショーのような単なるコンシューマエレクトロニクスの展示会だった時期があります。今のようなイノベーションの集積地になったのは2000年代になってからだと記憶しています。

 CESを始めとして、SXSWMWCといった、業界の最先端を魅了するイベントは数々ありますが、新たなアイデア、ビッグアイデアといったものは、作り込まれた場所からは生まれにくいのではないかと感じています。

 最近日本でも人気のあるTech Open Air。元々はクラウドファンディングから始まった、ファウンダー達の熱量が詰まったイベントです。私自身は参加したことがないのですがクラフトマンシップやマイスター制度というモノづくり文化を継承するドイツが生み出した、未来の絵図を創るプラットフォームを提供しています。

 日本にも一部熱狂的なファンのいるBurning Manシリコンバレーのテックコミュニティを魅了するこのイベントには、かつてグーグルのセルゲイ・ブリンやラリー・ペイジも古くからの参加者だとか。お金を一切使わず、Giveの精神で砂漠の一週間を過ごすカウンターカルチャー的なイベントであり、イベントグローブでも開催時期が近くなると多くのアクセスがあります。

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 このようなイベントが、イノベーションを生むためのマインドを育てていることは間違いないと思います。高い熱量を持ったイベントの発掘が、未来を創っていくためには重要です。

 イベントグローブとしても、なかなかすべてのイベントに参加することは出来ず、海外の知人や業界ネットワークからの情報に頼っていますが、それでも直感的に面白そうな匂いのするイベントはあり、それらには#編集長が行きたい!タグをつけてます。

 イベントグローブ編集部は、間違いなく世界で一番グローバルイベントのイベントページをリサーチしていて、既存イベントのアップデート情報や新しいイベントのリサーチまで、日々世界のイベント情報を収集しています。そのなかには、Webサイトの作り、情報の出し方、そしてWeb上の評判など、様々なヒントが隠されていて、ときに直感的に「これは!」というイベントと出会います

 もちろん実際に行ってみたら、ただのつまらないイベントだったというオチはあるかもしれませんが、Webサイトから溢れ出る熱量には敏感に反応するようにしています。

無難なのは、どれだけのCEOが参加しているか?

 もうひとつ分かりやすい目安としては、どれだけ多くの企業のCEOやCTOが参加(登壇など)しているか?です。多忙を極めるエグゼクティブが貴重な時間を割いてまで参加するイベントが、業界的に価値のあるものでないかと思います。世の中に新しい価値を生み出すファウンダーやCEO。彼ら彼女らが自ら自社のビジョンを語る場所は熱量が高いのです。この熱量(パッション)こそがイベントを活性化し、多くの人々を集める源泉だと思います。

 そしてこういったイベントも時間とともにコモディティー化し、いずれ参加するのがCFOやCIOといった実務寄りのエグゼクティブや、ディレクターやマネージャークラスに落ち着いてくると、かつての熱量は失われていくのではないかと思います。

 もちろん、モノを売るというフェーズでの市場価値の観点からは十分以上の価値を持つものであることは間違いはないです。

 要は、参加者が何を求めるのか?です

 市場 or  創造

 安定した売上を求めるのであれば前者、新たなビジネスやアイデアを求めるのであれば後者を選ぶことになると思います。

 イベントの持つ熱量は規模だけではないです。むしろ大きくなり過ぎてしまったイベントよりも、参加者が数百人のイベントの方が、参加者とのより密な関係の構築が可能ではないでしょうか?

 イベントグローブは、そんな場所を皆さんに代わって見つけていきます。


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