MWC 2025年問題

大規模イベントの開催とオーバーツーリズムの課題

 MWC Barcelonaの開催地であるバルセロナは世界屈指の観光デスティネーションとして、年間3200万人と市の人口の20倍もの観光客を迎えていますが、近年はオーバーツーリズムが大きな課題となっており、自治体としても対応策に頭を悩ましているのは事実です。

 そんな観光都市バルセロナで開催されるMWC Barcelonaですが、大規模イベントに共通して言えるのは、開催期間中の物価上昇や公共交通機関への影響です。

 同様の問題は、CESSXSWでも課題となっています。CESの現状については定かではないですが、1990年代にラスベガスで開催されていたCOMDEXでは、会期中のホテル料金が高騰が顕著で、通常60ドル/泊のホテルが200ドル以上に高騰することはザラでした。

 もちろんダイナミックプライシングという観点からみれば、季節によっての変動は当たり前なのですが、COMDEXにおいては別の事情として通常来訪者が利用するカジノの設備利用度が下がる率が高く(その分真面目に仕事をしている証拠ですが)、現に半分以上のカジノテーブルにシートが掛けられクローズされていることも多かったのです。また会期中はタクシーの稼働率が上がり、地域だけでは供給しきれないため、他地域からのタクシーの受け入れも行っていました。

 ラスベガスのエコシステムというのは全体最適化モデルの典型であり、エコシステム全体の繁栄のために航空運賃やホテル代が他地域の同クラスと比較して安く設定されています。これによって多くの利用者を誘致し、利用者が支払う個々のサービス料で全体の経済を潤して行くモデルです。この前提をひっくり返してしまうのが、COMDEXの参加者でした。

MWCが直面する2025年問題

 2020年は残念ながらMWC Barcelonaは開催見送りとなった訳で、2021年を待つしかないのですが、ここで2025年問題というのが浮上してきます。

GSMAと開催都市関係者がMWCバルセロナの開催合意を延長

 MWC Barcelonaの主催者であるGSMAは、開催地であるバルセロナ市、カタルーニャ州、スペイン政府との間で開催の契約を結んでおり、この契約が2015年に5年間の延長され、同イベントは2023年までバルセロナにおいて開催される予定でした。しかし2020年のCOVID-19の影響による2020年の見送りを受けて、これを2024年までに延長したわけです。

 この規模のイベントになると、自治体等との連携は必須となり、政府ぐるみでの取り組みが必要となります。ここで主催者はコンセッションという形で自治体等と契約を結び、この期間内においては、事業者が事業を展開します。

 コンセッションという形態は、例えばカジノリゾートのような業態において政府とリゾート事業者間において結ばれる契約であり、リゾート事業者はこのコンセッション期間において、投資を回収していきます。

 MWCのバルセロナ開催の終了によってで出てくる問題は:

1.500億円を超えると言われるMWCの経済効果

2.仮に開催地が移るとした場合の受け入れ先

 主催者であるGSMAはMWCによる会期中の地域への経済効果は500億円以上と発表しており、この権益を手放すことができるのでしょうか?

 政府による観光客削減計画に対して、関連事業者は反対の姿勢をとっているのは事実のようです。

 そして、仮に2025年以降の開催地がバルセロナから移る場合に一体どこがこの受け皿になるか?です。一時的とは言え10万人を超えるの来訪者を支えるインフラが要求される訳ですから、どこでもと言う訳にはいきません。ヨーロッパ圏内で考えた場合に、この規模の会場インフラを持つ自治体は限られてきます。

 イベントの成功は肥大化とコスト上昇に結びついており、永くMWCに参加している方々からも近年はMWCがお金にうるさくなったというお話しも聞きます。これはMWCに限らず、CESもSXSWも同じことでしょう。参加者の増加とともに、様々なレベルの参加者ニーズを満たす必要が生じ、コスト増大を招いています。


イベントのお悩み、何でもご相談ください!