2021年もあっという間に一ヶ月が過ぎ、4月からの新年度に向けて企業のマーケティング活動も活発化してきています。引き続きパンデミックの影響は続いていますが、海外ではワクチン接種が始まるなど、長いトンネルにも出口がが見えてきたと期待したいところです。
イベントグローブの海外イベント検索ユーザー数も年末から平均25%/月の順調な増加を続けており、2021年に向けた海外市場でのイベントへの参加・出展に向けた検討を始めていることが伺えます。
主催者サイドでも、2020年の後半は先の状況が見えないため年内および翌年以降の開催予定のアップデートもされていない状況でしたが、昨年11月の下旬から徐々に翌年以降のイベント開催予定をアップデートする主催者も増え、2021年以降の開催予定が見えてきました。
イベントグローブでは、2021年以降のグローバルイベントの開催状況を見ながら、今後海外のイベントがどのように変化していくかを考えてみました。
Contents
グローバルイベント市場の現状:
まずは、今起きていることからまとめてみましょう。
⇒ 4月までは主要なイベントがオンラインに移行
依然として新型コロナウィルス(Covid-19)への有効な対応策が不十分な現状では各国が観光目的での出入国の制限を求めており、グローバルカンファレンスの開催には障害となっています。現時点では多くのイベントがオンラインでの開催を発表していますが、暫定的ものも多く今後の感染症対策の進捗によってはオフラインでのイベント開催に移行する可能性があることも示唆しています。
⇒ 開催日程が決定していないイベントが多い
イベントグローブで掲載している海外イベントの4割以上が2021年以降の開催日程が未定の状態です。2020年の上期に開催を延期または開催見送りにしたオーガナイーザーの多くは2021年の開催日程を決められず、2年連続で開催を見送りにする主催者も出ています。
例えば2020年の4月開催を保留したオーガナイザーが2021年4月の予定を発表できず2年連続で開催ができない状態になっています。この傾向は特に通常1〜6月に開催していたイベントに強く、この状態が続くとイベント告知サイトのSEOは弱くなると想定されます。
これはかなり深刻な状況で、このまま開催日程が公開できない状態が続くと存続が難しくなるイベントも出てくるでしょう。
⇒ 東欧から中国は活発な動き
中国、ロシア、トルコのイベントは2021年以降のスケジュールを早めに公開しています。例年の開催時期とずらしているケースも見られますが、ほぼ元通りのスケジュールで開催を予定しています。
実際に参加者が集まるかどうかは別として、イベントの継続開催は、SEOの観点からみれば将来的に検索結果の上位に露出が増える可能性があります。
これから起きること:
今後数ヶ月から数年の間に起きることを考えてみました。
⇒ オフラインイベントへの回帰
今後もオンラインイベントが増えていくことは間違いありませんが、現在オンラインでの開催を予定しているイベントが通常のオフラインを開催・併催することになると予想されます。現在オンラインでの開催を公表している主催者も、感染症の状況次第ではオフラインのリアルイベントを開催することを明示しているので、ワクチンの流通と合わせて状況が好転するとともに従来の開催が増える可能性があります。
2021年はグローバルでも最大規模となるCESが完全なオンライン開催へと移行し、これがオンラインイベントのベンチマークになると思われましたが、実際にオンラインイベントで、参加者・出展社ともに十分なバリューを提供することはまだ難しいとの意見が多いようです。同様なことは昨年のIFAでも起きており、特に展示会の領域では、まだまだ改善が必要とされています。
3月にはSXSWがオンラインで開催されるので、これがどのような結果を残すかに期待したいと思います。
⇒ 新興イベントの台頭
CESやMWCのような長い歴史を持つ特定の業界団体や専業のイベントオーガナイザーによるイベントに加えて、VCやユーザーコミュニティが運営するイノベーションを切り口としたイベントが増えてきています。従来は投資家とスタートアップが出会うことが目的だったイベントにも企業からの参加が増え、直接投資の機会が生まれてきています。
また、中国・ロシアの活発な動きが来年以降のマーケティングに繋がり、あらたに集客・出展社誘致にプラスに働く可能性があります。同時に現在あらたなスケジュールを保留している北米、ヨーロッパのオーガナイザーは検索における露出を失うリスクを抱えています。
⇒ オンラインへの移行に成功するイベント
カンファレンスやセミナーを中心としたイベントでは、オンラインの開催に成功している事例も出てきています。元々トレーニング等を中心とした一方向性のコンテンツであれば、有料化さえ順調に進めばオンライン化は難しくないでしょう。むしろ会場費が掛からないことと参加費を下げることが可能なことから、オンラインの方が効率的な場合もあります。
前提として考えると、これらのカンファレンスは、そもそもオフラインで開催する必然性のなかったイベントとも言えます。
どのような取り組みが必要か?:
イベントの参加者、主催者ともに、ビジネスの有効な場としてのイベントとステークホルダーを結びつけるための取り組みをしていくことが重要です。
⇒ 情報への接触機会
海外で開催されるグローバルイベントの参加者を調べてみると、アジアの国々からの参加は多くても、日本だけが取り残されているケースが散見されます。市場としては有望であっても、日本企業からの参加・出展が無い又は商社などの代理店のみによる参加に限定されているケースも多いようです。国内市場の規模だけでは経済を維持することが難しい日本は必然的に海外との関わりを維持する必要があり、積極的に参加の機会を増やしていく必要はありそうです。
日本からの参加が少ない主要な要因として:
1. イベント主催者側の課題
2. 日本人の情報収集スキル
の2点が考えられます。
1. イベント主催者側の課題
イベント業界はマーケティングに疎いのが現状で、特に非英語圏のオーディエンスへのリーチが弱い傾向があります。海外の主催者の基本的な考え方としては、どのような手段を使っても多くの参加者を集めることに注力しています。その集客方法も旧態然のマスマーケティングとテレアポに頼っており、近年では有効なメディアプラットフォームの減少によりアドネットワーク等の利用が中心になっています。しかし(特にB2B)イベントの集客についてアドネットワーク経由での集客には苦戦しているようで、欧米のイベント主催者は日本向けのマーケティングについて苦戦しているとのことです。非英語圏向けのマーケティングは今後主催者が検討していく必要があるでしょう。
2. 日本人の情報収集スキル
一般的に日本人が英語におけるサーチに強くないため世界には日本人が知らないイベントが多いのが現状です。現状ではイベント名(by name)で検索できないイベントは参加の対象となりにくいのが現状です。
新しいイベントを探すことが不得手なことに加えて、日本の商習慣として現状維持の傾向が強く、企業として新しいイベント参加への決断がしにくい環境があります。
イベントグローブとしては、これらの課題解決のためのソリューションを提供できるようにしていきたいと考えています。
⇒ まずは開催予定を明示すること
Covid-19の被害が拡がって以来、イベント業界は次回のイベント日程発表を伸ばすことにより翌年以降のスケジュールを決められないループに入り込んでいます。この負のループは断ち切る必要があります。
負のループの打開策
・オンラインでの開催をしてユーザーを繋ぎ留める
・仮にでも良いので次回日程を公開してユーザーをつなぐ
欧米のイベントオーガナイザーとの話を聞くところによると、これらの課題については、2つの要因が影響していると考えられます。
1)イベントを点で考えている
イベントを開催期間のみで考えていて、年間のタイムラインでのマーケティングが出来ていないのが現状です。オーディエンス(参加者)は、複数の同種のイベントを比較しながら年間の予定を組んでいることから考えると、年間を通したマーケティング(告知)を通じ、オーディエンスの購買(参加・出展)検討のタイミングに合わせたマーケティングが不可欠。
2)開催延期を恥と思うメンタリティ
イベント業界には、いまだに開催時期が最終確定するまで公開しない傾向があります。そのため開催の半年前まで日程が公開されないケースや、会場が発表されないこともあります。
参加者の目線で考えると、すべての条件が揃わない状態での出張申請は難しいため、情報が不備なイベントは参加の対象から外れてしまいます。
開催日程の変更自体が参加者に不便を与えることは間違いありませんが、やむない事情での日程変更は受け入れられるものであり、情報の不備に比べれば問題にはならないでしょう。