変わりゆく世界のイベントプレイヤー

専門オーガナイザーの時代は終わるのか?

国内外で日々開催されているカンファレンスや展示会。多くはイベント専門事業者(イベントオーガナイザー)による主催・運営となっており、日本ではリードエグジビションUBM日本能率協会、そしてメディア系企業による主催が多い。

しかし近年ここに大きなシフトが起きている。マーケティング分野で特に顕著なのだが、米国で開催されているDreamForceAWS re:Inventが良い例で、サービスを提供している事業会社がオーガナイザーとなっており、これらのイベントに他のサービス事業者やユーザー企業が多数参加する。

これらの主催企業はCRMやクラウドといった領域でデフォルトのプラットフォームとなるエコシステムを構築しており、彼らのサービスのB2Bユーザーを巻き込み自社のマーケティング活動の一環として大規模なカンファレンスを開催している。従ってこれらのオーガナイザーは、イベントとして利益を上げることは主目的ではなく、ユーザー及びパートナー企業を集め自社サービスをプロモートすることが目的。

そして参加者満足度を上げるためのコストが潤沢でありサービス が充実しているケースが多い。カンファレンスの登壇者のレベルもパートナー企業やユーザー企業からトップレベルのスピーカーが集まり、総じて参加者の満足度は高い。更にはカンファレンスの参加費が無料(ただし招待制)の場合もある。

対するリードやUBMといった専門オーガナイザーは、イベント運営のコストをカバーした上での利益を上げて行く必要があるのが現状。出展料、スポンサー料、カンファレンス・パス代を主な収益源として会場費や事業運営費をカバーした上で利益をあげていくのだが、売上に応じて会場の品質や来場者へのサービスの質が左右される。

国内では有料カンファレンスが少なく、出展・協賛費で収益を確保するオーガナイザーが多いとは言え、上記のような事業オーガナイザーのイベントへの参加者の質が上がるに連れ、出展・協賛社も流れることは必至であり、減収は避けられない。2010年を前後に盛り上がってきた有料のカンファレンスにおいても、近年は会場の装飾やケータリングサービスの質の低下は避けられない。

一例として日本ではグローバルマーケティングカンファレンスとして存在感の大きかったアドテックではあるが、本家米国では2014年以降西海岸での開催が無くなり、通常秋に開催される本家ニューヨークも2018年開催は5月には早々に延期が発表され、その後のアナウンスはされていない。

日本はどうなるのか?

前述の通り、日本ではリードなどの専門オーガナイザーによる主催が多いのは事実ではあるが、事業会社によるイベント開催も増加しているのは事実。

例えば米トレジャーデータの日本法人が主催するPLAZMAは近年明らかに規模を拡大しており、同分野の専門オーガナイザーが開催するマーケティング系イベントのシェアを明らかに奪っている。特に日本では有料カンファレンスの文化はまだ本格的に根付いておらず、サービス事業会社が主催するイベントのコンテンツの質が上がれば、必然的に来場者、出展・協賛社が流れていく。

特にPLAZMAを主催するトレジャーデータは、ソフトバンク傘下にあるARMに買収されており、通信キャリア、半導体、シェアオフィス、電子決済、シェアライド・モビリティまで多様なサービスをカバーするエコシステムを持つソフトバンクにとっては、データやマーケティング領域におけるマーケティング活動のプラットフォームとして最適ではないか。

PLAZMA以外にも、顧客データを利用したマーケティングプラットフォームを提供するLiveRampの主催するRampUpなど、サービス提供企業が主催するカンファレンスが勢いをつけており、今後は事業会社によるカンファレンスイベントが増える傾向にある。