シンガポールに見るイベントの今

アクティオポート代表 種倉氏に聞くシンガポールの今

 イベントグローブでは、業界の未来を創るキープレイヤーの方々のインタビューを実施しています。世界の産業界の未来を創るカンファレンス、貴重なTipsから四方山話までお届けしたいと思います。


 業界の未来を創るキープレイヤーインタビューの第二弾は、シンガポールに拠点を構えるActioport(アクティオポート)代表の種倉章仁さんにお話しを伺いました。アジアパシフィックのハブであるシンガポールでイベント業界をサポートする種倉さんに、シンガポールのイベント業界の現状についてオンラインでお話を伺いました。

聞き手:古谷充弘(EventGlobe編集長)     
    田中達之(EventGlobe)


古谷本日はお忙しいところありがとうございます。イベントグローブでは、イベント業界の今後を見据え、世界のイベント業界で起きているお話しを業界のプレイヤーに伺い、今後のオフラインマーケティングについて考えていきたいと思います。

 早速なのですが、まずはアクティオポートの紹介とシンガポールの今?について伺いたいと思います

ActioPort
種倉章仁氏

種倉:ActioPortは、日本のイベントレジスト(以下、イベレジ)のシンガポール法人として2014年7月に設立されました。親会社であるイベレジの日本経済新聞によるM&Aによって、日本経済新聞社の孫会社となったわけですが、当時からMBOを考えており、実際に2020年の1月にMBOしました。

 業務内容は、従来通りイベレジのシンガポールでの販売代理やイベントのサポート、そして独自開発でこちらのニーズに対応したサービスを開発するイベントテクノロジーの会社として運営しています。

 ただMBOが今年の1月だったと言うこともあり、直後にはコロナの蔓延によるロックダウンもあり、こちらでも多くのプロジェクトが保留されているのが実情です。

古谷:イベレジのシンガポール法人として運営されていた訳ですが、主にどのような顧客の方々が対象だったのでしょうか?

※以下は登録メンバー向けとなりますので、ぜひ会員登録(無料)をお願いいたします。

種倉:シンガポール企業が中心になりますね。企業向けに様々なデジタルサービスを提供しますが、イベント業界が長いのでオフラインマーケティングのサポートを含めたサービスが中心です。

 ただ現状はオフラインのイベントが出来ない状態なので、オンラインイベントのプラットフォーム開発に注力しています。

●オンラインイベントの課題はシンガポールでも同様

古谷:この時期、様々な企業がオンライイベントプラットフォームの開発をしてますが、オンラインイベントでの中心はカンファレンスになると思います。

 その場合に実際にマネタイズはうまく行くのでしょうか?

種倉:そこは主催者側も課題を感じているところですね。
 従来のイベントであれば、カンファレンスも展示会もスポンサー収入が大きかったのですが、ウェビナーのなどのオンラインイベントではスポンサーがつきにくいのは事実で、現在ActioPortではその課題を解決するためのソリューションを開発しています。

 バーチャルエキスポ等のやり方もがありますが、そこまで作り込んだVRではなくウェビナーと疑似出展ブースを見せて、視聴者トラッキングをする仕組みです。実際にクライアントが決まっており7月にリリースで進めています

古谷:その領域に競合ってあるのでしょうか?

種倉:様々なソリューションがあり、VRでのオンラインゲームのように3Dアバターをバーチャルブースをみせるようなものもあります。ただしコストが大きく手軽に利用できる仕組みではないです。3Dモデリングのカスタマイズの時間もコストも大きく現実的なソリューションではないですね。

 弊社では、その前段階のサービスとしてウェビナーページ上にスポンサー情報を載せるような形です。似たようなコンセプトもありますが、私達は差別化を進めています。

古谷:現状はどのような体制でやられているのでしょうか?

種倉:現状はシンガポール1名とパキスタンに1名開発者を雇っており、全員開発をやっていますが、私は営業も含めすべて、まあ何でもやりますね。

古谷:シンガポールは外資系の企業が多いと思いますが、在シンガポールの日本企業のお客様はいるのでしょうか?

種倉:以前は大手の重電メーカーさんともお付き合いありましたが、最近は日本経済新聞社のシンガポールとのお仕事の機会が多いですね。

●ブランディングを目的としたイベントの活用が多い

古谷:さて、それではシンガポールでのイベントの開催状況、市場の変化や、現地市場の特徴などを伺えればと思います。

種倉:今回のCovid-19の蔓延が一番の大きな変化であって、各主催者生き残りをかけてますね。シンガポールは元々多種多様なイベントがありますが、元々ブランディング系のイベント、プロダクトローンチや、カクテルレセプションなどの招待制のイベントが多いです。

 もちろんカンファレンスもありますが、無料の完全招待性がかなり多くて、弊社はそこに招待者向けのRSVPシステムを開発して提供しています。このシステムは日本(イベントレジスト)でも提供したのですが、あまり日本では需要なかったようです。

古谷:そのようなイベントって、どのような規模なのでしょうか?

種倉:小さいもので、200〜300名、大きいものは2,000人くらいでしょうか?ActioPortではイベント運営から事務局までサポートしています。

古谷:御社で提供しているRSVPシステムですが、やはりRSVPを利用すると確実に参加率は良くなるものなんでしょうか?

種倉:もちろんRSVPを出さない人も多いですが、システムとしてユーザーによるフォーム入力のいらないものなのでユーザーの負荷を少なく、歩留まりは良いです。さらに事前の参加人数の確認によってケータリング等の発注や会場レイアウトのプランニングに役立っています。

古谷:考え方としてはCRMと同じですね。

種倉:そうですね、イベントのレジストレーション自体がCRMなのですが、RSVPした人にQRコードを提供すれば、スキャンするだけでスムーズなレジストレーションも可能になり顧客満足度も上がります。

 招待制のイベントは招待リストがあるので、フォームの入力+スキャンのみで運営可能ですが、従来型のレジストレーションとも併用は可能です。

 RSVPシステムは、結構好調でしたが、Covid-19以降はかなりキャンセルになりました。このような招待制のイベントは、カンファレンスと違いオンライン化が難しいので、いまは社として開発にシフトしています。

古谷:実際にオンラインイベント実施のための一番の課題はなんなのでしょうか?

種倉:まあ課題だらけなのが実際ですね。主催者はスポンサー獲得ができない。スポンサーもリード獲得ができない。では自社でオンラインイベントをやるにも集客力がない。そして参加者も偶発的にサービスを見つける機会が減る。

 様々な課題を抱えています。

 そんな中、新しいチャレンジを日々考えています

古谷:話は変わりますが、いまシンガポールの主要なベニューって、ホテル、マリーナベイサンズサンテックシンガポールエキスポなどがありますが、会場側から主催者とかへのセールスアプローチはあるのでしょうか?

種倉:直接ではないかもしれませんが、サンテック主催のイベントオーガナイザー向けのイベントはあります。サンテックでイベントを開催する顧客向けに招待制レセプションを実施していますね。

古谷:海外のベニューって営業部隊が強いですよね。日本の会場の方とは違いますね。私が以前所属していたイギリスのオーガナイザーの副社長も元シンガポールエキスポの営業責任者だったそうです。

Resorts World Convention Centre

種倉:実はいまシンガポールエキスポはCovid-19対応の緊急病棟になってますね。

 近年の活動を見ているとマリーナ・ベイ・サンズやサンテックが強いです。また南のセントーサ・リゾートにも新しいコンベンションセンターがあります。

古谷:国の規模から考えるとシンガポールは規模のある会場が多く存在しますね。

種倉:そうですね、シンガポールエキスポが10万平米で、東京ビッグサイトより大きいです。国としてもMICEに注力はしています。ただ、実は今回のコロナではMICE業界に対する国の補助は限定的で、MICEの会場のみ人件費の75%負担の補助、それ以外のイベント関連業種は特別な補助はありません(他にシンガポールの法人は一律従業員の給与の25%補助を発給)。

釜山にあるBEXCO全景

古谷:国のMICEへの取り組みはそれぞれで、例えば韓国の場合はMICEに対する助成金が大きいらしいです。釜山の展示会場であるBEXCOでは、グローバルのイベントには大きな助成金があると聞きました。

 元々漁村だった地域をMICEポータルにしようと映画祭や広告アワードはを誘致していますね。残念ながら日本はまだまだMICEの助成は強くないですね、特に東京都が弱いです。

●シンガポールの今後は?

古谷: シンガポールにおけるイベントの今後なのですが、イベレジとして5年、前職を含めるともうシンガポールに10年ほど住まれていますが、何か近年の変化ってあるのでしょうか?

種倉:FinTechは国も力をいれている分野で、Fintech Festivalも盛り上がっています。しかし方向性としては大規模な展示会より、カンファレンスに注力していて量より質に向かっていると感じます。 各国からVIPを呼んで、来場者の質を求めていますね。

古谷:シンガポールはそのためのインフラがいいですね、空港からVIPを町中の良いホテルにすぐに連れてこられる。

 日本だとグローバルのVIPを呼べるホテルが少ないです。2017年のGastechでもグローバルのエネルギーメジャー企業のVIPは都心の5つ星ホテルから毎朝ハイヤーでメッセに通っていました。

種倉:Covid-19の影響はシンガポールでも大きく、政府が強権国家なので、イベントや単なる人と合うだけでも規制が適用されています。現状ロックダウンが解除されるフェーズ1からフェーズ2に移行したところですが、フェーズ3がいつ来るか、いつになればオフラインのイベントが開催できるか分からず、オンラインソリューションに対する需要は増えていきます。それがスタンダードになる分野も出てくるでしょうね。(※本インタビューは6/24に実施しています)

古谷:会場の方にも辛いですね、オフラインをやってもらわないと。 ちなみにフェーズ3になったときに、どの規模のイベントができるのでしょう?

種倉:実は、その具体的な数字は公表されていないのですよね。イベントができても200人かもしれないし・・・

古谷:結構、各国共に具体的な数字は出しにくいのかもしれないですね。

種倉:まだ、いつになれば何ができるのか見えない状況ですね。それまでの保証も特にイベント業界にはない状況です。

古谷:そうなると、旅行業界全般は大変ですね。ホテルも稼働率が低いとか・・・

種倉:いやホテルとかの旅行業界は助成金があるんですが、MICEが旅行業界に含まれないんです。現在フェーズ2に移行して、国内向けにホテルステイのローカルキャンペーンは行われています。

 シンガポールもイベントのピークは9〜11月ですが、今はオンラインへの移行を検討しています。

田中:今後のオフラインイベントの過渡期だと思いますが、いわゆるMICE、カンファレンス、展示セットのイベント考えた場合にの、スポンサーがつくかどうかの問題があると思いますが、そこのバリューを同じレベルで担保は難しいと思います。

 そうなるとスポンサーの求めるのはリーチなのか、そこに至る過程なのか?が明確に見えないとオンラインとオフラインのギャップは埋められないですね。
リアル感や偶発性は再現できないような気もします。

種倉:そこは人によって意見が分かれるところで、オフライン・オンライン、或いはハイブリッドもあるし、私個人的にはオンラインを推進するなのかと。

 そして、オフラインにあって、オンラインにないものを埋めていくテクノロジーの開発にチャレンジしていきたいと考えています。

田中:ちなみにシンガポールMICE市場って、近年も伸びていたのでしょうか?コロナ以前のお話しですが・・・

種倉:そうですね、新興国に比べて緩やかにではありますが伸びています。市場として成熟はしていますが、新しいものも少しづつ増えています。

田中:日本のMICE市場って、どうでしたっけ?

古谷:日本の場合は、規模は別にしてオリンピックに向けて、件数自体は増えていたのは事実です。ただこれは一時的なものでオリンピック後には再現性のないマーケットなので市場の成長性としては継続的なものではないと思います。

 あと、実際に利用可能な会場があるかどうか?が課題ですね。シンガポールの場合、以前海べりにあった会場が次に来たときには内陸になっていて、新しいホテル会場が建設されていたりします。

田中:そう考えると、市場はゆるやかに伸びている。そしてイベントのデジタルトランスフォーメーションよる伸びしろで考えるとまだまだ成長の見込める市場ですね。

 シンガポールで開催するグローバルイベントって、やはり参加者は国外からの参加者が多くなる訳ですよね?

種倉:もちろんアジア近隣国が多いですが、多様性に富んでいるのがシンガポールのイベントの特徴ですね。

古谷:シンガポールの場合、Covid-19という課題を除けば、まだまだ伸びる可能性を持っていますよね、圧倒的なインフラの強みがあります。ホテルの数、空港近い、英語通じる・・・・・

種倉:治安も良いですし、空港も24時間稼働しています。

田中:実際チャイナリスクが高まったので、アジアのイベントの中心がシンガポールのシフトする可能性がありますね。

種倉:そうですね、香港は元々MICEを推進していましたがリスクは高まっています。

田中:ちなみにシンガポールで開催されるイベントって、何か特定の産業が多いような事はあるのでしょうか?

種倉:ハードウェアよりはソフトウェアが多いですね。

古谷:確かに製造業は少ないですね。

種倉:製造業はタイが中心になるのではないでしょうか?

田中:全般的には、テクノロジーなどの新しいものが中心になっているんですね。

古谷:まだまだシンガポールは成長が期待できるマーケットということで、Covid-19さえ解決の糸口がみえれば、今後も訪問する機会が増えそうです。イベントグローブでもシンガポールで開催されるカンファレンスにも参加していきたいと思うので、ぜひ現地でお話しをさせていただければと思います


編集後記:
日本発のテクノロジー企業としてシンガポールに進出したActioport。日本人が海外で活躍するのは、まだまだ様々な障壁があり、それにチャレンジする種倉さんのお話しには学びがありました。

将来はぜひイベントグローブもActioportを見本にしてグローバル市場で飛び立ちたいと思います。



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