CESのオンライン化のウラを読んでみる
昨今、多くのカンファレンス展示会がオンライン開催に舵を切っていますが、各社ともに苦渋の選択を迫られているのは間違いないようです。
COVID-19のコントロールがままならない状態で当たり前の選択と取る向きもあるが、実際はどうでしょうか?
イベント主催者のビジネスモデルやエコノミクスについては、ブログでも書いていますが、現時点で言えばオフラインのリアルイベントの方が利益率は高いことは間違いないようです。
これが中長期的な観点で見れば、カンファレンス中心であればオンラインでもマネタイズは可能ですし、展示会中心(特に食品やコスメ系)であれば当面はオフラインに固執する必要性はあるようです。
この状況を踏まえると、今回のCES(というか主催者であるConsumer Technology Association(CTA))の試みは次世代の展示会ビジネスへの挑戦なのではないかと、考えを巡らせる必要があります。
CESの幸運とMWCの悪運
COVID-19の流行が本格化し人々の移動に対しての懸念が始まったのが3月。2020年のCESが開催されたのが1月初旬ということで、当時は特に問題なく17万人以上がラスベガスに集結しています。
さて、その数ヶ月後に開催予定されていた大規模なイベント、具体的にはMWC BarcelonaとSXSW他は中止を余儀なくされました。これらのイベントの中止は、産業界に大きな影響を与えますが、主催者に取っても大きな痛手であることは間違いなく、現にSXSWはスタッフの3分の1にあたる50人をレイオフしています。
さらにMWCを主催するGSMAは2020年中のMWC ShanghaiとMWC Los Angelesをキャンセルしました。
対してCESはどうでしょうか?6月に上海で開催のCES Asiaも早々と見送りを決定し、参加者/出展者へのリファンドを始めました。そして2021年のラスベガスはオンライン開催の決定です。
現実問題としてMWCやSXSWの主催者は、収益面ではかなり厳しいのではないかと想像できます。(これは絶対起きてはいけないことなのですが)ワーストケースシナリオを考えた場合に、仮に2021年の春に向けて全く有効なワクチン開発の目処が立たないといった場合に、3月に開催されるであろうMWC Barcelonaの開催を見送ることが出来るのでしょうか?
実はCESには余裕がある?
もちろんCTAにとっても、近年通信やモビリティの分野で伸び著しいCES Asiaの見送りは収益に大きな影響がありますが、こちらは参加者数が4.2万人、出展520社のサブイベントであり、現時点ではこの一回分のキャンセル損失しか発生していません。
対してGSMAは、既にバルセロナ(来場10万人以上、出展2400社以上)、上海(来場7.5万人以上、出展500社以上)、ロスアンゼルス(来場2.2万人以上、出展750社以上)を失っています。
業界が新たなオンラインビジネスのフォーマットへの知見を重ねている今、ここでCTAは将来のイベントビジネスのビジネスモデルのイノベーションへの挑戦のために、敢えてメインイベントであるラスベガスのCESのオンライン化に踏み切り、身を削ってでも将来のビジネスモデルの実験に踏み切ったのではないでしょうか?イベントグローブでは、今後のCESの動きにも注意深く観察していきたいと思います。