イベントマーケティングの考察(1)

 年間3,000件を超えるグローバルイベントを紹介しているイベントグローブには、海外イベントの調査を通じて様々な事例が集まります。この調査から見えてくるイベントマーケティングのTipsを、イベントを運営する企業や主催者の皆さんにお届けしていきたいと思います。

イベントサイトの間違い探し

〜イベント主催者の提供する情報はズレている:海外イベントのあるある〜

 日々、海外イベントの情報を収集しているイベントグローブですが、公開されている筈のイベント情報が見つからないことがあります。そのなかでも一番困るのは下記のようなケース。

1.URLを変更してリダイレクトをかけていない
2.SSL対応をせず、ユーザーがサイトにアクセスできない
3.中止イベントのサイトをディレクトリから削除し無かったことにする

 せっかく興味を示してくれたターゲット顧客を取り逃がす典型的なお話です。これはオフラインマーケティング業界でも、グローバルイベントオーガナイザーがかなり遅れてる部分で、おそらく業界のマーケティング担当人材の問題ではないでしょうか?
 私が所属していたイギリスのオーガナイザーでも、マーケティングの基礎を知らなかったり、Webを理解していない人材がイベントのマーケティングを担当しており、むしろネガティブなマーケティングプラクティスを実行していた事例はあります。

今回はマーケティングの基礎の観点からイベントサイトの問題を提起してみました。

目次:

Webサイトの役割を考える

◎あっても役に立たない情報

◎◎⇒ 総床面積/同時開催イベント

◎知りたいのに書いていないことが多い

◎◎⇒ 漏れがちの情報/5W1H

Webサイトの役割を考える

 イベントWebサイトの役割は、単純に「参加者が知りたいこと」「主催者が伝えること」なのですが、実際には「主催者が伝えたいこと」だけを提供しているケースが多く、ここにズレが発生しています。どんなに見た目がきれいなサイトを作っても、マーケティング目線からWebサイトを体系化しないとユーザーには伝わらないので注意が必要です。

あっても役に立たない情報

 実はイベント主催者のサイトには不要な情報や掲載場所を間違っているケースも多く、それがユーザビリティを悪くしている場合があります。また見せ方として難解なものもあるので、いくつか例を上げましょう。

総床面積:

 イベントの概要ページによくある出展面積ですが、

これ知りたいでしょうか?

 主催者としては、イベントのスケール感を表現したいのだと思いますが、正直なところ面積を言われてピンとくる参加者はどの程度いるでしょうか?これは自己満足です。

同時開催イベント:

 展示会中心のイベントに多いのですが、同じ会場で様々な別イベントを開催していているもの。まるで別々のイベントをやっていて、申し込むのが面倒にみえますが、冷静に考えるとこれって単なる会場ゾーニングですね?

 参加者目線で考えれば、ビッグデータとサイバーセキュリティは、切り離せない情報なので、ひとつのイベントでどちらも参加できれば良いわけです。実際、このようなイベントは一つのパスですべてのイベントに参加できる一緒の空間だったりします。国内でも同様のイベントが多数ありますが、日本のイベントであれば、これは周知の事実でしょう。しかし、海外に出張してイベントに参加するとなると心配事がひとつ増えるのです。

 別に一度にいくつものイベントやったから偉いわけではないのですが、スケール感を出すために複数のイベントサイトまで作ってイベントを大きく見せる手法は日本のオーガナイザーもよく使う手法です。会場に行けば展示ホールの入口は違っても中が繋がっているというケースもあり、別に複数イベントの同時開催という必要は全く感じられません。シンプルに大テーマとゾーニング(中テーマ)で表記するほうが参加者には伝わりやすいでしょう。

 主催者がこれらの情報を掲載しているのは、出展/協賛企業に向けたメッセージであるケースもありますが、これらの情報は参加者にとってはユーザービリティを下げるので、出展/協賛企業に向けたメッセージは分けて掲載しましょう。

知りたいのに書いてないことが多い

 逆に参加者が絶対知りたいのは?何でしょうか?

 非常にシンプルなお話で、いわゆる5W1H(厳密には6W2H)の情報ではないでしょうか?

Who(だれが)When(いつ)、Where(どこで)、What(なにを)、Why(なぜ)、How(どのように)

※ここにWhom(だれに)、How Much(いくらで)が加わります

漏れがちの情報とは?

 さすがにイベント名(What)が漏れるケースはないと思いますが、重要な情報が漏れている場合が多いのが現実です。

参加者情報(Who):

 どんな人が参加するか?は出張を申請するには重要な情報です。通常はイベントの事後レポート(Post Show Report)等で公開されている参加者情報ですが、Web上で公式レポートを公開している主催者はそれほど多くありません。出展社に向けて来場者総数だけは公開されている場合もありますが、職責や決裁権限など、公開すれば参加者の役に立つ情報はいくらでもあります。

 これらの情報は、“あっても役に立たない情報”にも書いた出展/協賛企業に向けた情報として非常に有効です。出展/協賛企業が必要としているのは床面積ではなく、どのような属性の参加者が何人集まるか?です。主催者が販売しているのは、展示会場の床面積ではなく来場する企業参加者のプロファイルだということを意識しましょう。

参加費用(How Much) & 参加者数(How Many):

 どちらも重要な情報ですね。料金を知らないと予算を組めないし、参加者人数は会社から参加承認を貰うためにも参考になる数値です。参加費用については本来は料金テーブルがサイト上に公開されていて、早期割引の情報を含めて記載されているべきなのですが・・・・・ない場合も多いです。

 よくある間違いは、レジストレーションが外部のベンダーのシステムに依存していて登録を最後の画面まで進めるないと金額がわからないのものがあります。
 全く金額の情報がない状態で、レジストレーションを進めなくてはいけないのですが、最後の支払い画面にきたところで数十万といわれても、その場で決済も出来ないので、離脱するケースは多いです。
 本来、この辺りはレジストレーションシステムの登録課程の離脱ポイントを分析すれば答えは出てくると思うので、決済画面での離脱が多い場合は料金表を解りやすく表示する必要があります。

 レジストレーションの終盤での離脱はかなりネガティブと考えたほうが良いでしょう。登録作業で参加者の時間を無駄に使ってしまうとロイヤリティが下りますし、さらに追い打ちでしつこいセールスの電話が掛かってくると・・・・ユーザーのロイヤリティは一気に下がります。

会場(Where):

 冗談のようなお話しですが、会場情報が掲載されていないイベントサイトも多数あります。イベントグローブ編集部は、日本で一番多くのグローバルイベントページを閲覧しています。仮に新たに10件のイベントを見つけてカレンダーに登録する場合に、2割以上の確率で会場情報が掲載されていません。

 仮に会場情報が掲載されていても、その情報を見つけるのに10分以上掛かるケースも多々あります。

 この辺の分かりにくさについては、以前知り合いのイギリス人オーガナイザーとも理由を考えてみたのですが、概ね下記のようなパターンです。

1.会場は仮予約済みだが、参加者・出展社の数に合わせて変更したいので、意図的に公開しない

2.毎年同じ場所でやってるから分かるでしょ?と思い込んでいるケース

3.サイトに掲載はしてはいるが、掲載場所が極めて分かりにくい

などの理由です。上記はすべて参加者の目線が欠けているために起きているのではないでしょうか?特に3の場所が分かりにくいケースで実際にあったのは、サイトの概要、プログラム、登壇者、出展者まですべてを見てもみつからず、最後に主催者の「今年もよろしく」メッセージに入っていたりと、全く参加者のことを考えていないつくりになっていました。

 また最近増えてきているのが、When(開催時期)がないケースです。これは、特に今回のような感染症等の理由で、いつになったら開催できるか分からない場合です。

 元々予定していた時期に開催できるか分からない。しかし今キャンセルしてしまって、蓋を開けたらその時期で開催可能だった場合の説明の手間を惜しみます。

なので、一度サイト上で公開した開催日のみを削除してしまうのです。これも参加者にとっては非常に迷惑な話です。

まとめ

⇒ サイトの役割定義は重要

 イベントサイトの目的は集客に徹する

⇒ ターゲットユーザーに役立たない情報は入れない

 参加者向けの情報をメインに出展/協賛企業向けの情報は分けて掲載

⇒ ユーザーが必要とするフレームワークは漏らさない

 参加者が必要とするフレームワーク項目を精査し掲載

 今回は、イベントサイトにありがちな課題をまとめました。次回はユーザーの役に立つサイトを作るための取り組みについてまとめます。


イベントグローブでは、今後もイベントを運営する企業や主催者の皆さんのために役立つイベントマーケティングTipsをお届けしていきます。

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