産業特化型とテクノロジー横断型イベント

時代に応じて変化してくニーズ

プリントメディアでもイベントでも、B2Bの分野で見ていくと特定の産業にフォーカスした産業特化型イベント(バーティカル)とテクノロジー横断型(ホリゾンタル)に分かれてくる。そして、そのトレンドは時代と共に変わり続けている。

歴史的に見ればインターネット以前の情報が少なかった時代はホリゾンタルな情報獲得機会が求められ、イベントで言えばビジネスショウやエレクトロニクスショーに多くの人が参加して、これから世の中に出てくるサービスや製品の情報を収集していた。

もちろん産業の上流にある技術的なコンテンツは、専門誌や産業特化型イベントが中心の情報ソースではあったが、サービスが世に普及するのが近いものはホリゾンタルな横断型のメディアやイベントが舞台の中心であった。

ビジネスショウ(日本経営協会):2000年位までは、就活中の大学生にとっては新聞を読むのと同じくらい重要なイベントであり、企業にとっても、産業のトレンドを把握するためには大事な位置を占めていたイベントであった。

エレクトロニクスショー(日本エレクトロニクスショー協会):元々は電子部品の見本市として始まったイベントではあるが、これから世に出る製品のショーケースとして情報収集の場として多くの企業が参加した。現在は、COM Japanと統合されCTECとしてITとエレクトロニクスの総合ショーとなっている。

WPC Expo(日経BP社):国内でのPCの普及とともに90年台中盤より開催され、一時はアジア最大のPC関連イベントとなった。

この流れが変わってきたのが、PCがコモディティとなりインターネットによって様々な情報がネットワークに載るようなった頃。生活を豊かにするためのサービスや製品の情報はインターネットにより情報そのものがコモディティ化され、これらの横断的な総合イベントは力を失っていった。

おそらく常時接続のインターネットが普及した辺りから、産業横断型のホリゾンタルなイベントが勢いを無くし、より業界特化型のイベントにシフトが起きた(と言うよりは、元々このバーティカルは存在した)。

そして新しい節目

2000年代初頭は産業特化型のイベントが中心にであり、インターネット以前のような複数の産業をカバーする領域というのは不在であった。しかし、2000年代中盤からあらたな傾向が見え始めている。

近年の傾向として産業(分野)特化型のイベント(例:医療やエレクトロニクスといった産業)ではなく、テクノロジー横断型のイベントの重要性が増している。

バーティカルからホリゾンタルへのシフト

インターネット後の産業特化型イベント(バーティカル)から、より産業横断型(ホリゾンタル)へのシフトが進んでいる。

  1. AIやマシンラーニングなど、より横断的に利用されるテクノロジーを中心としたカンファレンス
  2. セールスフォースやオラクルといった企業向けサービスを提供する企業によるプライベートショー

2.については、一見テクノロジーを中心としたバーティカルに見えるかもしれないが、これらの企業の提供するサービスは企業・社会のインフラとして横断的に利用されるものとなっており、実はすべての産業分野にとって不可欠なものとなっている。

イベントグローブに掲載される世界のカンファレンスで露出するキーワードを見ても、横断的なテクノロジーキーワードは ”AI”、”アナリティクス”、”データ”、”ブロックチェーン”といった、極めてテクノロジーに特化したものであるが、いまやこれらのキーワードはあらゆる産業にとってコモディティとなっている。製薬におけるビッグデータの活用であったり、LNG(液化天然ガス)の流通におけるブロックチェーンの活用など、テクノロジーはすべての産業に必要なことは間違いがない。

欧米では、早くからこの傾向が現れており、一見テーマのはっきりしないイベントではあるが、広くサービスや製品、そして”イノベーション”や”ビッグアイデア”、”セレンディピティ”といった思想的なキーワードが重要になっている。

SXSWバーニングマンといった、特定の目的に絞り込まれていないが、新しいアイデアやインスピレーションを喚起するためのイベントには数万人の参加者が集まり、新たなビジネスアイデアが生まれる場所となっている。

そして元来は消費者向けのエレクトロニクス製品の見本市であったCES(Consumer Electronics Show)のが、イノベーションが集まる場所として見直されていることが良い例。