今後のイベントはオンライン化されるのでしょうか?

 Covid-19の拡大に合わせて、様々なイベントがオンライン化されていて、それに合わせてオンラインセミナーや展示会のソリューションが注目を浴びています。

 一体どれ程のサービスがあるのかは分かりませんが、オンラインプラットフォームの利用により、今回のような感染症リスクへの対応や会場費の削減など、参加者にとっても業界にとっても良いことばかりの未来が実現可能になります。

 イベントに限らず、在宅ワークといった側面でもオンラインのカンファレンスプラットフォームは大活躍していて、今後の働き方に大きな進化をもたらすツールといえます。

 実際に私のまわりでも目をキラキラさせながら「今後は主要なイベントはすべてオンライン化されて移動は必要なくなりますね〜」なんてことを言う人もいますが、本当にそうなんでしょうか?

結論をいうと、それはないと思います。

主催者の動向にみる現実

 この数ヶ月のあいだにCovid-19対応として数々のイベントがオンラインで開催されてきました。そしてこれらのイベントの次回開催については殆どがオフラインでの開催を誇示しています。In-Personという言葉を強調しているのです。

 現在2021年の5月以降の開催日程を公開しているイベントのうち、オンライン開催を発表しているのは14%となっており、月別に見た場合にはオンライン率は下がる傾向にあります。

 オフラインで大きな成功を収めていないイベントはともかく、いままでの実績としてオフラインで成功している主催者にしてみると、敢えてオンライン化してリスクを侵す理由はどこにもないのです。

 結局のところ、オンライン化に伴い新たにレベニューモデルを構築するのが難しいという点が一番のネックではないでしょうか?

 例えば2020年はオンラインで開催した実績のあるLatitude59。2021年はオフラインでの開催を発表後、オンライン併催のハイブリッド開催と告知されていました。しかし最近になって2021年の開催見送りを発表しました。

 オンライン開催の知見がある主催者であっても、オンラインでの事業化は難しいのです。

ハイブリッド開催の意味

 以前イベントレジストに寄稿したコラムに書いた展示会のハイブリッド化について考えてみたのですが、これもイベントがハイブリッド化していくというのは認識が違っているような気がしてきました。あえて言うのであれば、オフラインのイベントにもオンラインオプションが追加されると言うのが現実だと感じます。

 イベントのフルオンライン化への流れとしてのハイブリッドというより、オプションとしてのハイブリッドというのが今日の現実でしょう。

オンラインイベントの本質と限界

 あくまでも現時点の話ですが、オンラインイベントって単なるブロードキャストと変わらないモデルになってしまうのではないでしょうか? 一方向性のカンファレンスでは、スピーカーとオーディエンスの間にエンゲージメントは生まれません。これではテレビで講座を見るのと何も変わりません。

 そして、触覚、嗅覚、味覚といった知覚を実現できないオンライン展示会では、単なるカタログと変わりません。コモディティ化された商品の購買においてはオンラインカタログで問題ないのかもしれませんが、市場未導入のサービスや製品のバイイングにはオフラインのエンゲージメントは不可欠であって、これをオンラインで実現するにはまだ時間が必要だと思います。

 確か2005年くらいに某大手代理店のインタラクティブ局の方が「3年以内に紙のメディアはすべて電子ペーパーに置き換えられるから、出版社はビジネスモデル考えないといけないよ」と言っていたのを思い出します。しかし2021年現在でも、当時言われていたような電子ペーパーは実用化されていません。

 確かに当時でいう電子ペーパー的な技術は紙メディアを置き換える可能性が騒がれていたのですが、その時点でメディアの電子化には大きな課題があり、それが故に紙メディアの電子化はそんなに早く実現しないのは分かっていました。

バッテリーの問題です。

 バッテリーが進化を続けるなかでも、体積/容量比と充電時間の問題は簡単に解決できない課題で、これは今日においても解決されていないのです。


 いずれイベントはオンライン化されていくのは間違いないと思います。カンファレンスについては配信技術、ペイウォールについては実用化されているので、おそらくこれは思ったよりも早く進む可能性があります。残る課題は、双方向のエンゲージメント実現と、回りの参加者の反応を分析・シェアするような仕組みでしょうか?

 問題は展示会。そもそも実物を見て、触るのが目的なので、根底から考え直す必要があります。これが解決するのに何年掛かるのか?新しいテクノロジーの誕生を楽しみに待ちましょう。


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